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はぁ……。面倒臭いなぁ……。
そう思いつつ、俺はパトロールに向かった。
空にはまるで絵に描いたようにキラキラと耀くまんまるの太陽が昇っていた。
「何が君の幸せ、何をして喜ぶ……」
俺は歌い出す。……別に歌いたくて歌っているわけではない。俺を書いた奴が、「パトロールしてるときは歌う」なんて糞設定を追加しやがったから歌わされているだけだ。
半ばヤケクソのように歌いながらパトロールしていると、「誰か助けてー!」と叫び声が聞こえた。このとぼけたような胸クソ悪い声は多分カバオだろう。俺はしょうがなく助けに向かう。
しっかしこの「助けて」って台詞。何回、否何千回聞いた事か。もう聞き飽きたよ。
んで俺はこのあとカバオの元に行って、「許さないぞ! バイキンマン!」って台詞を言わなくちゃなんねえんだよなぁ。これも、何千回言ったことか。
……それに「誰か」って言ってるんだから俺じゃなくてもいいんじゃね?つうか、こんなときこそ普段役に立ってねえミミが体を張って生徒を守るべきじゃねえ?
とそんなことを思っているとカバオ達を発見した。今、カバオと役立たずのミミが、バイキン男メカに踏み潰されそうになっている所だ。
「危ない!」
ズシーン!俺は両手でバイキン男メカの足を受けとめた。
「大丈夫、カバオ君、ミミ先生!」
俺がそう言ったのと、バイキン男が「なにいいぃぃぃぃ!!」と叫んだのは同時だった。さらに言えば、周囲にいたザ・チビガキブラザースが「ア、アンパンマン!」と嬉しそうな顔で叫んだのも同時だった。
あーもあーも、"うるさい、黙れ、耳障り"の三拍子だ。俺様と声を重ねるんじゃねえ。バイキンとチビガキのくせに。
「許さないぞ! バイキンマン!」
俺の口が言う。勝手に言う。
……俺の意見を聞いてくれ。
もう、許す。面倒だから許す。何故許すかって?許す。とにかく許す。だから頼む、これ以上面倒を増やさないでくれ。或いは、面倒を起こすなら俺がいない遥か遠くで起こしてくれ、バイキンマン。いやバイキンマン様。
「今日こそ決着をつけてやるぞ! アンパンマン!」
……もう止めようぜと言いたい。これ以上争っても意味無いだろ?どうせ俺ら、この世界では死なないし。血も出ないし。決着つかないっつーの。お前が「バイバイキーン!」つって終わりだっつーの。
「いけっ、カビルンルン!」
うわ、バイキンマンの野郎、カビルンルンを出してきやがった。「ルンルン」なんて言葉ついても、全然楽しくないからな、カビルンルン。
「やー! たー! はー!」
俺はかけ声と共にカビルンルンをぶっ飛ばして行く。何故に俺はカビルンルンをぶっ飛ばしているのだろう。しかも、パンチで。
俺があのジジイ(俺の顔を作った、あの変なオヤジのことだ)ならば、カビルンルンを格闘でぶっ飛ばしているアンパンマンに向かって
「アンパンマン、新しい顔だよ!」
などと言って新しい顔を渡す前に
「アンパンマン、新しいカ○キラーと医療用エタノールだよ!」
と言って、カビ&バイキン抹殺計画を立てるであろう。
……そんなことが可能なはず世界なのに、やはり格闘でカビルンルンを倒すのは効率が悪すぎる。何より――
「今だ、カビルンルン!」
「うわーー!!」
カビルンルンが俺の顔にカビを撒き散らす。この野郎、カ○キラーぶっかけっぞゴルァ!
「か、顔が汚れて、力が出ない……」
ったく、いつもこのパターンだよ。俺、弱過ぎじゃね?
「ア、アンパンマン! い、今ジャムおじさんを呼んでくる!」
カバオよ、一つだけ言おう。お前は何回この俺の姿を見ている?俺が直ぐにやられることぐらい、意識的に呼吸するくらいに簡単に想像できるだろうに。俺が戦いはじめた瞬間、さっさとジジイ読んでこいよ。この馬鹿ガキが。お前の脳味噌の部分は全て水でできてんのかコノヤロウ。……とまぁ、こんなに罵倒するといいかげんカバオが可愛そうなのでやめてやるか。はっはっは、たまにはいいとこあるだろ、俺様。
――数分後
「ハヒフヘホー! このまま踏み潰してやるわ、アンパンマン!」
そんな声が聞こえたような気がした。気のせいだよな、気のせいだと言ってくれよ。
「これで終わりだ、アンパンマーン!!」
……おいバイキンマン、お前今まで何してたんだ?この数分間何してたんだ?いつも通りに俺の顔汚せて、いつも通りに優越感にでも浸ってたのか?さっさと踏み潰しとけよ、このノロマが。まぁ、どうせ主役であるこの俺様は死なないけどな。……それを言うならお前もか。
ズドーン!
俺の頭上でそんな音がした。……俺は死んでないな。まぁ、当たり前だが。
「アンパンマン、大丈夫!?」
頭上でメロンパンナの声がした。大丈夫かだって?その質問は「お前いっぺん頭汚されてみろ」って一言に尽きるぞ、低脳。
「アンアンアンアンア――」
遠くの方で、車のエンジン音と乳製品の鳴き声がした。
あぁ、上を見るとあの「名犬、乳製品」が直立していた。今の気持ちを表現するならば、「チーズが立った!」……ではなく、「( ´_ゝ`)ふーん」であろう。もう、犬が直立するの当たり前の世界になってるからな、この世界。おにぎりは喋るし、バタコなんてもう日本人だかなんだか良く分からない名前はあるし、バイキンマンの女は食パンに恋してるし、何より、アンパンに顔があって体がある。……よく、こんなわけのわからない設定を美化できたな。すごい、すごいよスタッフ!……あ、スタッフとか言っちゃだめか。子供の世界壊さないように気をつけないとな。面倒だが。
「元気百倍! アンパンマン!」
おっと、いつのまにか、俺の顔がまた代わった様だ。バイバイ、アンパン。こんにちは、アンパン。
「もう許さないぞー、バイキンマン!」
この台詞も何回も言ったなぁ。そろそろ「もう許したいけど、設定上しょうがないから許さないぞ、バイキンマン!」と、子供たちの夢を破壊したいなぁ。……無理だろうけど。
「アーーーーン、パーンチ!」
なんだ、このアとンの間の長いタメは。腕をぐるぐる回すだけで腕力がアップでもするのかい、この世界は?だとしたらベーゴマってのは地球壊せるな。ま、俺たちゃ死なないからどうでもいいが。
「バイバイキーン!」
ほら、さっき予告したろ?まったく、懲りない奴ってのはすごいねぇ。何か俺、バイキンマンに「懲りないで賞」を送りたいよ。あ、ちなみにこの賞は最低な奴に送られる賞ね。プププ。
「大丈夫かい、みんな」
どうせ大丈夫なんだろ。
「ありがとう、アンパンマン!」
おいおいおい、このガキ共俺の質問を無視しやがったよ。ブットバスゾコラ。
俺は今日も戦う。誰も悪さをしない世界を築くまで。……つまり永遠に、ね。
アンパンマンはみんなの夢を壊さないために戦うけど、本当はお前らの夢なんてどうでも良いんだよ。じゃあね。