少説


痛っ!
私の腕に、裁縫セットから出された針がさされる。私は昨日、車にひかれた。私は、死ぬかと思った。
でも、左耳と左腕が引き千切られ、そして体中が真っ赤になるだけで、私は無事だった。
――私のただ一人の親友、ちぃちゃんは死んじゃったけれども――

痛っ!くっ!……っ!
再び、数度の痛みが襲い、私の腕には穴が増える。そして針のお尻についた糸によって、私の腕はくっ付いていく。
――そんなことをしても無駄なのに。どうせ、私の腕は動かない。今までもそうだったように――

……っ!!
今度は、耳だ。私の耳に針が通る。これは、本当に許してほしい。
私は体が動かない。前も、今も、そしてこれからも。腕も、足も、首も、全て。でも、味覚以外なら感覚はある。だから、聞こえる。だから、痛みを感じる。
――感覚とは、受け身のものだ。感じることはできても、それに抵抗することはできない――

はぁ、はぁ、はぁ……。
――麻酔は、私には使われない。……何故なら、使う必要がないから――

もう、もう止めてぇぇ!!!
私の叫びは誰にも届かない。何故なら、私のこの叫びは心の中で反響し合うだけなのだから。


「……できたよ、千波……」
ちぃちゃんのお母さんは、私を耳と腕が付けられた私を、ちぃちゃんの前に移動させる。
……いや、こんなのはちぃちゃんではない。ちぃちゃんの代わりにそこにあるのは、ちぃちゃんが笑顔でいた頃の、ただの写真。
「千波が大切にしていた、お人形さん……赤くなっちゃったね……」
――そう、私は人形。叫んで助けを求めることのできない、儚い人形――

DEEP LIFE