俺は医者だ。俺の元にやってきたジイイやババアを治療している。……が、それはあくまで仮の姿。
俺の本当の姿は、詐欺師だ。こう見えても幾人ものジジババから金を騙し取ってきた。
俺の得意分野は、オレオレ詐欺。
昔は金を儲けるために医者をやっていた。だが、今はオレオレ詐欺のターゲットを見付けるために医者をやっている。
詐欺のターゲットとなるのは病院に来た年寄りだ。特に騙されやすそうな奴。
さて、今回のターゲットは、今日病院に来た痴呆症の婆さんだ。
この婆さんが勝手に話し始めた情報によると、ここ数ヶ月孫は家に帰ってきてないらしい。
そのときに孫の名前が聞けなかったのが残念だが、この情報は確かなようだった。
この婆さんに付き添ってきた息子がそれを否定しなかったからだ。
ともかく、俺はこの情報とバレないことにかける。
ピポパのピッと。プルルルルルル……、プルルルルルル……。ガチャッ。
お、繋がった。さて、ここからが本番だ。
「あ、もしもし? 俺、俺だけど……」
声色をかえていうので、今日会った医者だとは気づくまい。
ん?オレオレはもう古いってか?でも、意外とこれがいいんだよ。
「え? 健一? もしかして健一かい?」
おぉ、婆さんが出た。よし、これだけで騙せる可能性がアップだぜ。
「うん、そうそう、健一。あのさ、おばあちゃん……?」
一応本当にあの婆さんなのかを確認。もしこれで違うとか、怪しまれたりしたら即切るしかないだろう。
「そうだけど、最近連絡しないで、どうしたんだい?」
よし、どうやら俺は婆さんの孫になりすませたようだ。
「うん、最近仕事で忙しくてさ」
仕事で忙しいとか忘れてたとか言えば大低は大丈夫だろうと思う。
「え? 健一、仕事してたっけ?」
あ、やべ、もしかしてこいつの孫、ニートだったか?クソ、だったら適当に話を合わせるか。
「あ、あぁ、新しく就職したんだ。」
……このセリフなら、最近仕事を止めたんだとしても、ずっと前から仕事してなかったとしても、大丈夫だろう。
「そうなのかい? 頑張ってね」
あ、危なかった……。バレなくて本当によかった。フフフ、やっぱこいつバカだな。
っと、本題を忘れるところだった。
「ところでおばあちゃん……、俺、車で人ひいちゃってさ……」
あくまで暗そうに言う。まぁ明るそうに言ったら絶対に怪しまれるからな。
「本当? 大丈夫なのかい?」
「いや、それが駄目なんだ。示談金として300万円必要なんだ。勿論、俺はそんなに金持ってないし、もし示談金を払えなかったら俺は刑務所に……。頼む、おばあちゃん、おばあちゃんだけが頼りなんだ!」
さて、これでよし。あとは返事を待つだけ……。
「え、ほ、本当かい!? ちょっと正子さん! 正子さん!」
え?ちょっとまて、正子って誰だ?
「はーい、なんでしょうか、お義母さん」
今電話からおかあさんって聞こえたぞ。お義母さんってことは子供か、あるいは義理の子供かな。まぁ、問題ないだろう。
「正子さん大変だよ、健一が人をひいたって!」
さて、これが吉とでるか凶とでるか。
「……え? それは……もしかして……」
ん?なんだ、事故を起こしたって言うのに何でこんなに間があくんだ?普通ならもっと慌てるはず。
「それは、もしかして、詐欺……では?」
へっ?なんでばれたんだ?なんでだ?
「何言ってるんだい! 声も健一だし喋り方も健一なんだよ!」
声も喋り方も一緒だったのか、俺。いや、兎に角、おばあちゃんはあっさり騙せたのに何でこの正子とかいう奴は全然騙せないんだ?
「でもねお義母さん、健一は今部屋で引きこもってるんですよ?」
瞬間、俺は電話を切った。
まさか引きこもりがいる家に引きこもりのフリをして電話してしまったとは……。
作戦失敗だった。